レビュー

[展示] 椿会展2016 ー初心ー、ふたたび

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資生堂ギャラリーの椿会展がおよそ70年という歴史のある展覧会であること、グループ展というよりもプロジェクト性が高いと思えることが判ったこと(詳細は、前回椿会展を訪れた際の記事に)、それらを受けてどうしても再訪して、もう一度確かめたくなりました。

改めて見て、このようなグループ展を自分なりにやってみたい、そんな思いを持ってしまう温かみを感じました。その温かみの端緒は赤瀬川原平氏の不在にあるのではないか、そう考えています。

2013年から2017年まで続く第七次椿会、初回の2013年の展示には赤瀬川氏もそのために制作した作品を展示しましたが、自身の病気療養のために翌年の2014年は制作ができず、1990年代の作品を展示することとなりました。同じ年の10月に赤瀬川氏は亡くなりましたが、メンバーの招集以降、顔合わせ〜やりとり〜展示を繰り返す中でのメンバーの不在というものはかなり重大な出来事であることが想像できます。これも、昨年の初心の図録(過去の椿会展の図録はギャラリーで閲覧可能、購入も)に掲載された青木陵子氏のテキストを読んだから気づいたようなものなのですが。

今回の展示で、青木氏は、自分がそれまで見聞きしてきただけの存在であった他のメンバーたちが自分同様に本当にいたという実感を伝えるためのZINEを展示しています。ZINEのページは青木氏が他のメンバーとのやりとりで収集した何かで構成されていて、そのやりとりの中に赤瀬川氏が真ん中にいることを感じるものがありました(見た人じゃないと判らないですが、鉛筆の話です)。展示の度に何かにつけて赤瀬川氏のことが話に出たりするのだろう、など思ってしまいました。そういうことに気付きながらZINEのページ順を考えるのはとても楽しい一時でした(ZINEのページは来場者が自由にページを組み換えられ、持ち帰ることができる)。やりとりの場に赤瀬川氏の不在ゆえに想起させられる存在感が新たな展開をもたらしている、そんなことを考えていたら、赤瀬川氏ご本人が椿会に自分の不在がもたらす何かを予見した上で参加されたのではないか、とまで考えてしまいました。こういう書き方は、会ったことのない人間だから書ける冷たい書き方かもしれませんが。

それはそうとして、こんな風に毎年同じメンバーで開催するグループ展ってあるのかなあと改めて思いました。いや確かに仲間内で毎年行うグループ展ってあると思いますが、●年から●年は誰それさん達で行いましょうみたいな与えられたプロジェクトで運営するのは、参加者に大きな影響を及ぼすような気がしました。

前回の記事で触れられていない展示について書いておきます。

赤瀬川氏他界後に参加した島地保武氏のシンバル宙づりインスタレーションは、宙づりシンバルが床に落とす影と照明の光がダンスしているように見えて、いいなあと思いました。また、シンバルは叩いてもよいらしく、マレットみたいなものが置いてあり、実際に叩いてみると、音の反響がギャラリーの吹き抜けを上っていくように響いて気持ちのよいものでした。

内藤礼氏の「color beginning」は10年前から取り組んでいる絵画ということですが、物でも風景でも光が満ちているときは眩しくて無色というか透明に見えてしまうことがありますが、そんな状況の絵画でした。遠目だと白一色なので、白いキャンバスに白を塗ったのかと思いましたが、そうではなく、近くでみると細かく描きこまれているのが判りました。畠山直哉氏のメキシコの下町?の住宅群の写真の向かいに配置されていますが、カラフルな住宅群に光が満ちるとこんな風に見えたりして、などと思ったりしました。

銀座という土地に関連した伊藤存氏の映像作品からは止むことのない変化を繰り返す東京を連想しました。

最後に、畠山直哉氏のメキシコの風景写真について再訪して気づいたことを書いておきます。
上述したように下町?の住宅群の写真なのですが、風景写真というよりも住宅群のポートレイトのように見えました。つまり人の顔と同じように、メキシコの風景写真なのですよと一言で言い表せない様々な営みがあるんだよなぁ、と思ってしまったのです。夕方に撮影したもの、昼に撮影したもの、クローズアップ、俯瞰、ゴルフ場、人の姿、車などが確認でき、そんなところから人の表情みたいなことを連想しました。

また、住宅群というのは、山肌を覆うように住宅が埋め尽くしている様なのですが、パッと見、山の写真に色とりどりのシールを貼ったような錯覚を感じ、写真作品になったときの視覚にもたらされる効果がこんなになるのかと面白くなりました。

もっとも印象に残ったのが、下町風の住宅群と普通の住宅街が収められている作品でした。両者はゴルフ場(と見えた)で隔てられており、一番上には青い空が広がっている、そのような光景が一枚に収められているところに、今の世の中的な何かを感じました。またここの地名を調べてみたら、約30年前に大規模なガス爆発が起こったようで、リンク先のページから地域が完全に破壊された様子を知ると、東日本大震災の津波(ガス爆発とは異なりますが)をどうしても思い起こしてしまいました。機会があれば、メキシコ撮影の様子なども聞いたり読んだりしてみたいです。

■椿会展2016 -初心-
会期:2016年4月28日〜6月19日
開催時間:
平日:11:00-19:00
日・祝:11:00-18:00
(月曜休み)
会場:資生堂ギャラリー
入場料:無料
展覧会サイト:
http://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/past/past2016_03.html
展示風景:
http://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/past/scene2016_02.html

■2013年〜2015年の椿会展 ー初心ー
https://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/past/past2013_02.html
https://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/past/past2014_02.html
https://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/past/past2015_02.html